『それは時を越えたメッセージ』
太平洋戦争の末期、硫黄島では米軍との戦闘が迫っていた。その頃、島に新しい指揮官として陸軍中将の栗林が着任する。やがて本土からの補給も支援も途絶えるなか、自決しようとする兵士に、生きて戦うことの意味を説く。
クリント・イーストウッド監督による「硫黄島」を舞台にした作品。2作目は前作『父親たちの星条旗』とは対照に、日本人キャストによる日本の立場を再現するドラマとなった。緻密なリサーチの結果なのだろう、丁寧な描写に日本で作られた作品のように思える。そして、戦争を双方の立場で描くという試みは興味深く、前作とリンクしたエピソードに、同じ出来事の二面性が際立つ。そのなかにも、物語は一般の兵士である西郷(二宮和也)と、指揮官の栗林(渡辺謙)を通して描かれている。栗林の従来とは違う戦術に反発する将校たち。戦争を醒めた目で見ている西郷たち兵士。同じ立場でもそれぞれ戦争の捉え方は違っている。前作同様に当時の実情を物語っているようだ。第三者の視点が感じられるが、一つの見方では語れないものだろう。
不利な戦況で最後まで戦うことを説く栗林。そして最後まで戦う西郷。彼らは家族に手紙をしたためる普通の父親である。家族への想いは変わらず、それは日米双方の兵士にとっても同じこと。一人の兵士の立場を見れば、二つの作品が重なってくる。それでも一つに描けないのは戦争の現実ではないだろうか。どちらが正しいなどといえず、大きな流れに成す術はない。そんな兵士の思いには目を逸らさずに受け止めたいものだ。
過ぎ去った歴史ではあるが、戦ったのは父親たち、そのまた父親たちである。60年を過ぎた今、彼らの思いが無駄にならぬよう、歴史に学ぶ必要があるのではないだろうか。もっとも、戦争の傷跡はこの島に残り続ける。彼らの残したメッセージとともに、いつまでも残したい作品である。
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