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『青春の輝きと闇がリアルに刻まれた青春映画』
「浜」と呼ばれるところに住むシュウジの家族は、「沖」と呼ばれる地域の住民を蔑んでいた。だが、その沖に住む、それもヤクザ者の男がシュウジに優しさを見せる。シュウジの最初の“疾走”は、そのヤクザ者、鬼ケンと彼の愛人アカネの車に乗った時だった。やがて中学生になったシュウジは、ワケありらしい神父がいる沖の教会で、孤独な少女エリと出会う。エリと2人で疾走した時、彼の心にはかすかな恋心が芽生えていた。だが、すでに彼の周囲の歯車は少しずつ狂い始めていた……。
1人の少年の成長物語、といえば清々しくキラキラした青春映画を想像するかもしれません。しかし、重松清の同名小説を映画化したこの作品は、重たく、暗い。しかもその結末は悲劇です。それでも、観客は目をそらすことができないはずです。胸をグイグイ締め付けられ、時には息苦しささえ感じながらも、その悲劇に見入ってしまうことでしょう。なぜなら、そこにはシュウジを中心とした登場人物たちの悩み、苦しみがすさまじい緊張感とともに焼き付けられているからです。
ドラマの背景には、差別、いじめ、非行、管理教育、自殺、暴力など、多くのテーマが登場します。そして、「死」というとてつもなく大きなテーマも投げかけられています。陽光に照らし出された輝きも青春なら、暗黒の闇もまた青春。そのどちらもリアルに描き出されているからこそ、ボクらはこの悲劇をしっかりと見届けるのです。そして、最後には一筋の希望の光が……。真っ青な空を背景に咲くヒマワリの黄色が目にしみます。
監督・脚本は、これまのコミカルな作風を一変させたSABU監督。重厚さとスピード感を両立させた演出と脚本が見事です。主演の手越祐也、孤独な少女エリ役の韓英恵(『誰も知らない』)などの若い俳優に加え、豊川悦司、中谷美紀、大杉蓮、寺島進、加瀬亮らも存在感のある演技を見せています。
これは悲劇ですが、ただ悲しい涙を流す悲劇ではありません。しっかりと彼らの苦悩を受け止め、自分の頭で考え、明日を生きようとする若者たち、そして大人たちのためのドラマなのです。
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