『まだ見てないのであれば、原作は後回しでも』
東野圭吾のロングセラー小説を映画化した社会派人間ドラマ。殺人という大罪を犯した兄のせいで、度々人生を狂わされる弟の受難続きの日々を追う。原作で弟はバンドで成功を目指すが、今作ではお笑い芸人となっている。同じく、容姿がよくないとされていたヒロイン役はもの凄く可愛くなっている。原作と比較することが正しい視点かどうか分からないが、この二つが大きく違う点だろうか。ちなみに監督が沢尻エリカについて「どうやっても不細工にならない」と言っていたようです。
某サイトの調査で、この映画のイメージワードは「泣ける」「切ない」「悲しい」の三つで、これが全体の90%ほどを占めている。これが最も参考になるだろう。この映画の性質をよく表している言葉だと思います。
もちろんこの手の映画はテンポは遅いですが、感情の起伏、揺れ動きは実に忙しい。それだけ、差別というのは強大な壁なのだ。そしてその壁は壊れることを知らず、結局は背を向けるしか術がない。
映画の方では答えをややぼかしている印象はありましたが、「犯罪者の身内との関係は断絶すべき」という結論が出る。これは主人公(弟)と同じような境遇にいる当事者たちからすると迷惑な作品ということにもなりかねない。なぜなら、この結論がまん延した場合、当事者たちは益々いわゆるシャバで真っ当に暮らしづらくなる。実際がほとんど、このような状況下にいたら、裏社会が関の山となってしまうのが今の世の中なのだ。でなければ「類は友を呼ぶ」などという言葉は生まれない。度合いにもよるが、罪を犯した人間が家族と接するべきではない、というのはとても正解とは言い切れない。リアルに捉えている人も多く、考えさせられることも多々あり、単に泣ける安易な映画でもないのは確かだが、やはりこれはエンターテイメントなのだ。当たり前のことなのだが、これをふと忘れさせるほどメッセージ性に富み、綿密に描かれているということだろう。差別に対して万人が納得する確固たる解答がない(出てない)ことを忘れ、あんまり根詰めて考えすぎると、宗教的観点や言論弾圧の行き来になりかねないのでほどほどに。それが悪いかどうかは別として。
変更された設定に特に違和感はなく、原作にはない感動と謳われているラストシーンは文句なしに泣ける。小田和正の「言葉にできない」が流れた瞬間、むせび泣いてしまう人も多いはず。この演出は評価されるべきだと思う、が、イマジンが抜けてしまったことは、その歌詞の意味を考えるとどうしてもメッセージ性の低下に繋がってしまう。万人受けするだろうし、もったいないと思った人も多いのでは(権利の問題?)。
ストーリーはいたってシンプルで分かりやすく、考えさせられ、しかも感動できるとあれば、観ておいて損はない作品だと思います。
(不謹慎になってしまうかも知れませんが、私的な見所は吹越満が葬式で挨拶するシーンです)
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