『珠玉の恐怖』
ホラー映画の金字塔と呼ばれ、世代を超えて支持されている1970年代の作品「悪魔の
いけにえ」。DVD、ビデオ共に廃盤となってしまい、今ではプレミアが付いているこ
とは有名で、現在のホラー映画の立場を確立した事について異論を唱える者はいない
とされている伝説的な作品のリメイク第2弾(続編を除く)。
前回のリメイクでは、伝説的作品のリメイクのゆえ期待感が募りすぎてしまったせい
か「前作と比べて多少物足りない」という意見が多く見受けられ、筆者も同様の感想
を持ったが、今作品は明らかに平均的に上々の反応を獲得しているといえよう。なに
がそうさせているのか。
それは徹底であろう。悪魔のいけにえシリーズではお馴染みのブラックユーモアを最
小にとどめ、プロローグを大幅に割愛し、絶望と恐怖を徹底的に追及しているように
思える。BGMもシンプルである。説明的な箇所はごくわずかなので、冒頭はしっかり
と観たほうが良いだろう。レザー・フェイスことトーマスがなぜあそこまで異常な人
格に形成されているかと、親父の絶対性を理解すれば問題ないと思える。
やはりなんといってもタイトルにもあるチェーンソーだ。殴打するだけの器具ではな
く、装置を含んだ機械がレザー・フェイスの代名詞である。チェーンソーのエンジン
が唸りを上げた瞬間、時計がグルグル早まってしまうような疾走感と戦慄が走り、全
ての空気を変えてしまう。一唸り必死、爆音は死ぬまで止まない。
大虐殺というよりも、一つ一つの虐殺に確かなインパクトを受けた。いちいち歯がゆ
く、絶望させられる。無論、期待されているチェーンソーのスプラッターシーンも文
句のない圧巻具合である。進むに連れてチェーンソーを自在に、手足のごとく豪快に
扱っている。背中から突き刺したまま持ち上げる様は「おおっ」と声が出るほどだ。
この恐ろしさはそんじょそこいらの凶器では出せない。
トーマス(レザー・フェイス)役のアンドリュー・ブリニアースキーの演技は、オリ
ジナル版ファンはもちろん、マイク・カーシュナー(プロレスラー)ファンも満足す
るであろう熱演だ。巨躯の肉体に、チェーンソーと人間を軽々と扱う怪力は、深遠な
異常性を持つ怪物を演じるに十分な素質を持ち合わせている。
同じく再起用となるホイト役(エセ保安官)のリー・アーメイの役どころには唯一ブ
ラックユーモアが散りばめられている。毛ほども共感できない主張や的の外れた指示
など、彼のイカれた言動には耳を離せない。
極めつけはこれ。オリジナル版と同じナレーションを起用したのは、マニアにはたま
らない点であろう。これが恐怖描写に拍車をかけるスパイスになるのだ。
続編ではなくリメイクなので、当然予習は必要なく、今作品は観る者は選ばない。映
画館で耳にするチェーンソーの爆音を是非とも味わっていただきたい。「トーマス!
出番だ!」。
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