携わった全ての人々に拍手を!
一言で言うと情念であろうか。辞書を引くと、「抑えがたい愛憎の感情」と出る。
壮絶な不幸も幸せも、愛憎が揃わなければ成り立たない。コインのように、同じもの
だが裏を返せばまったく違うものになる。不幸と幸せはいつも一緒だ。
たまたま、松子は裏ばっかり引き当ててしまった。愛もあるけど憎ばっかり。ディズ
ニー映画をひっくり返したものが松子である。負の螺旋に絡みつき、離れられずにも
がき苦しむ。ただ、それでも松子は不幸面をせずに、笑顔・・・いや、変な顔をやめな
かった。救いようのない欠点だらけで不運な松子だが、変に魅力的なのだ。だから愛
されるが、やっぱり憎ばっかり。
鳥肌が立つぐらい存在感ありまくりでアクが強く、それでいてメジャーという豪華な
キャスティングだが、物語がブレることは皆無という、携わった者たちの怪童ぶりは
圧巻ではなかろうか。それに、原作の松子はあまりに凄惨なのだが、目を背けたくな
くなることはないだろう。例えば風俗に沈むくだりでも、「沈む」というマイナスの
イメージを感じることはなかった。それどころか「入れて良かった」と思わせる。そ
こに流れるBONNIE PINKの「LOVE IS BUBBLE」。こうしたシーンでは歌詞付きの音楽
で、まるでインド映画のように展開され、悲惨さをブッ飛ばしてしまうのだ。一瞬の
愛の交差点という寂しさがチラつきつつ、ゴージャスでバブリーな栄枯盛衰を心地よ
く楽しく味わえる。
物語は凄惨だが、観客席からは笑い声が出た。「松子」に対する底の見えない追求の
賜物ではないだろうか。
で、結局、松子の生き方は正解なのかダメなのかウンヌンカンヌンという観点はな
い。答えはない。メモリーオブ松子なのだから、松子の軌跡である。なので客観性は
取っ払われている。監督が言うように、松子の見ている世界を映像化されたものであ
る。観た上で、我々が判断をすればいい。
観賞後は頭が重くなるほどのボリュームがあり、かといって間延びしない一瞬一瞬の
頑ななまでの濃ゆさ。たぶんキリを意識して見つけなかったら、一晩中感想を書き続
けちゃうぐらいです。それでも終わらないか。お腹いっぱい、脳の満腹中枢が悲鳴を
あげるほど、怒涛で極上のメインディッシュ。
湿度の高い、不快指数の高いこの季節。ムシムシしたイライラをフッ飛ばしたきゃ、
松子を、食らえ。
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